世界からボクが消えたなら

『世界からボクが消えたなら』読書感想文


最近個人的に猫ブームなのと世間で話題になっていて気になっていたのと
表紙の猫の愛らしさに惹かれて、読んでみました
『世界からボクが消えたなら』

―あらすじ―
ボク(サバトラ猫4歳 名前はキャベツ)のご主人さまの話をしようと思う
ボクのご主人さまは30歳郵便配達員(男)でボクと一緒に同居生活を送っている人間だ
ある日真っ青な顔で家に帰ってきたご主人さまは、今日医者に余命宣告されたのだという
脳腫瘍であと数日で死んでしまうというのだ
そんな時、部屋になんと悪魔が現れた
悪魔はご主人に
「世界から何か1つを消す代わりに俺が1日延命処置をほどこしてあげるよ。
注意事項としては、ただし何を消すかは俺が決めるってことかなー。どうする?」と、
怪しい話を持ちかけてくる。
ご主人さまはその条件を飲む。
結果、1日めの延命処置では電話が
2日めは映画が、3日めは時計が悪魔によって消されていく。
世界からそれらのものが消えたことに付随してご主人さまは3人の大事な人との関係を失ってしまう。
電話が消えたことでご主人さまは電話が縁で親しくなった今はもう別れた彼女と。
映画が消えたことで映画が縁で親しくなった大学の頃からの親友と。
時計が消えたことで不仲ではあるがずっと気にしていた父親と。
ご主人さまは関係が消失したという結果に、意気消沈する。
そんな折、4日めに悪魔はこう言った。
「世界から猫を消そう」と。
ご主人さまは悲壮な顔で「やめて」という。
だけどボクは消せばいいと思った。生きたいのなら、そうすべきだとも。
悪魔は嗤って、まず猫を世界から完全に消す前にボクの姿をご主人さまから見えなくした。
ミャアと鳴いてもご主人さまの耳に届かない。
ご主人さまはボクを探して町中を駆け回る。
ボクは悪魔と一緒に透明人間の状態で、それをずっと見ていた。
胸が痛くなった。
何時間か経過したところで悪魔が魔法をといてボクの姿をご主人さまに見えるようにしてくれた。
ご主人さまは泣き崩れた。泣き崩れて、悪魔に言った。
「僕は猫を消さない」と。
それはとりもなおさず間近に迫る死を受け入れるということだった。
「ねえ悪魔、あなたは僕なんですよね」とも言った。
悪魔はちょっと笑った。肯定も否定もしなかった。
悪魔は結局「じゃあ、さよなら」ウィンクしてボクらの前から消えた。
悪魔が消えたら電話と映画と時計が復活していた。

それから、ご主人さまは終活を始めた。
彼女と親友に別れのあいさつをした。
仕事をやめる手続きと部屋等を解約する手続き等いろいろすることは山盛りだった。
お世話になった人へ手紙もたくさん書いた。
そして最後にご主人さまのお父さんに手紙を書いた。
ボクを拾ってくれたのは実はご主人さまのお父さんだ。
仕事にかかりきりで、愛情表現が下手で、ご主人さまにはその愛があまり届いていなかったけど
あるいは届いていたけども認めたくなくて無視されていたけれど、優しい人だ。
そんなお父さんに謝罪の言葉と赦しの言葉、仲直りの希望や自分の気持ちをしたためた長い長い
手紙を書いて、最後にボクを頼むと書いて、ご主人さまは言った。
「キャベツ、帰ろう」
お父さんの住む家(時計店)に向かって、ご主人さまはボクを自転車の前かごに乗せて運転する。
本当は、ずっとボクはご主人さまと一緒にいたい。
でもその願いはかなわないってわかってる。
ご主人さま大好きだよ。
ボクはミャアと一言鳴いた。


≪感想≫
正直あらすじ書いているだけで泣けてくる件
猫とご主人の絆を見せつけた後に引き裂かれる方向に行く話とか卑怯だと思います!!!!
こんなの泣かずにはいられません。

まず、この作品において、良いなと思ったのは、語り部が猫なところです。
もうこの設定だけで大勝利という感じがしました。
始終猫視点なのです。猫―キャベツの心情が語られるのです。
キャベツがご主人の死が目前にせまっている現実を前にして己が人生(猫生)を振り返り
自分は一人で生きてきたと思っていたけどそんなことはなかった。
僕は生かされていた。僕はいろんな人と、猫と、悪魔と、かかわって生きてきた。
それが僕を僕としていたらしめている。
僕はご主人は生きたいなら僕を消すべきだと思っていた。それが当然だと思っていた。
でも違う。そうじゃない。そうじゃなくて
世界からボクが消えたらならきっといろんなことが変わる。
ボクは死ぬべきじゃない。だけど……と、めっちゃ小さな頭でいろんな事を考えるのです。

尊すぎるわ!! かわいすぎるわー!!

あと、好きだったのは悪魔とキャベツのかけ合いですね。
で、この悪魔が、もう、言ったら怒られるかもなのですが、心臓にどストライクだったのです。
うん。多分結構言われているんじゃないかと思うのですが。
この悪魔が、もう、めっちゃ、おそ兄だったのです。
デビおそってこんなんだよねっていう理想形と完全一致していたのです。
あれ、私pixivで悪魔松で検索してデビおそ兄が悪魔のお仕事するお話読んでいたんだっけ?と
思っちゃうレベルのくりそつ具合だったのです。
正直な読書感想としては「しゅ、しゅごいよぉ。公式で悪魔松おそ兄主人公のスピンオフ小説
きちゃったよーハァハァ。オリキャラ出るって書いていたけどこんなんなら全然大歓迎。
わーこれもう映画化すべきじゃね!? え、もうしてる? 知ってたー!!」でした。
このあったま悪い感想文が、本心でした。

あとはですね。
ちょっと気になったことについて、
電話、映画、時計が消えたことになったらもっと大変なことになるよねと、思ったのです。
だから多分、『天使な小生意気』みたいに
実は世界は変容していなくて、ご主人さまとキャベツの認識がそれらが消えたように見える
風にしたってことなんじゃないかなと考えて無理やり自分を納得させました。
ただ、悪魔の目的がなんだったのがよくわからないのですが。
一応仕事っぽかったのですが。
いったい何をしたかったのか。
別の世界線で脳腫瘍によって死んだご主人さまが転生した姿が悪魔で
その世界線では彼女&親友&父&キャベツへのフォローを全くしないまま
死んでしまったが為に自分が死んだ後それぞれが哀しい結末を迎えたのをみてしまったので
世界線ではそうならないようにちょっかいかけている
つまるところ最終的には暇つぶし目的ということでファイナルアンサーになりました。
そうだね猫ちゃんかわいいからそりゃあちょっかいかけたくもなるよね仕方ない!
ちなみにキャベツとレタスとの邂逅については、
実はあれはレタスじゃなくて悪魔がレタスに変化して適当なことをキャベツに
ほざいていただけだという設定なら、なんとか許せるし、飲み込めるなと思ったので
私の中ではそういうことになりました。

設定のガバさがちょっと気になったけれど、楽しめた小説でした

以下、余談
世界から猫が消えたなら』の方は、悪魔が「アタシ」という台詞を吐いたところで
「これあかんやつや」と身の危険を感じて本を読むことを断念しました。
上記ストーリーをご主人さま視点で書かれただけのものだと思っていたらそんなことはなかったぜ!
これじゃあ読む意味ないし読む気にもなれないなーというのが正直な気持ちです。